1/20/2015

マジックのやり方がばれてしまうのは誰にとってデメリットか?

オチが重要な創作物、例えばミステリとかサスペンス映画とか、の話を知人と電車の中やレストランなどオープンな場所でするとき、結構周囲に気をつけます。まだその作品を知らない人の耳に私達の会話がうっかり飛び込んでしまったら、その人が将来得られるであろう驚きを奪ってしまうことになりかねないからです。

さて、故意であれアクシデントであれ何らかの理由で演じているマジックの手法を観客に知らしめてしまったとします。これはマジシャンの間で一般的に良くないこととされています。「何故なら、マジックの手法はマジシャンの共通財産(完全オリジナルの場合もありますが、多くのマジックの方法は過去から現在までの多くのマジシャンが使っている原理・手法を利用しています)だから自分一人が勝手に公開することは多くの同業者に迷惑をかけることになるから」という理由を割と耳にします。とても教科書的模範解答だと思います。揶揄するつもりはないですし、当然それも理由の1つです。が、あまり考えもせずにそれを唯一の理由として右から左に渡す人が少なくないのも事実。
私が常々思うのは、同業者に対しての迷惑だというなら、それは大きく範囲をとればいわば身内の問題であり、ペナルティが課せられるなり「もっと練習してね」と言われるなり、それでやってしまった事実は消えないけども対応や対処はそれなりにあるだろうと。
それよりも大きいのは何の罪もない観客から彼らが今後体験するかもしれないマジックの不思議を奪ってしまうことだと考えています。例えば私がマジックを下手に演じてしまってキーとなるテクニックのやり方が観客に伝わってしまったとします。するとその先、その人がマジックを見るときには常にそのテクニックの存在が頭にちらつき、上手なマジックを見ても以前ほどは感動を得られないかもしれません。
ミステリであれば(もちろんミステリのオチを先に伝えてしまうのもなしですが)最後に答え合わせがあります。自分が知ってるあの方法かなと思って読み進めても最後に違ったとなればそこには驚きや作者の創意工夫への感心も生まれるでしょう。が、マジックは答え合わせがないパフォーマンスです。なので実際には観客が知っているのとは違う手法を使って不思議を成立させていても観客が「自分がうっかり知ってしまったあの方法で大体説明つきそうだなぁ」と感じてしまったらかなり厳しいわけです。
現実問題として全てを90点以上の演目で構成するのは難しいこともあり、75点の演目を人前に出すことで最後のブラッシュアップと計ることもあります。しかし、観客が今後の人生で体験する不思議の割引券を渡してはいけないと、それは肝に銘じる必要があると感じています。

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