9/17/2015

マジックを英語で演技するに際して考えるあれこれ 2

前述の通り、日本国内では海外のお客様相手でも日本語の演技で構わないとの主張を自分でも実践してました。無理して英語で演技をして次のセリフで秘密の動作をしようと思っているときに、「え?」と聞き返されて何かのタイミングを失ったり、セリフを何度も言い直すうちに間が延び、集中力が削がれ、効果が減じてしまうリスクがあるなら、いつもの言葉での演技の方が総合点は高くなると思うわけです。とは言っても非日本語ネイティブの人に向かって演技を日本語でやり通すのはそれはそれで練習と気力が必要です。つい、変に間を取ってしまったりしていつもの演技と変わってしまいがちなのは経験ある方もいらっしゃるでしょう。

さて、3~4年くらい前に海外に遊びに行ったときにタクシーのドライバーの方やバーでバーテンダーの方と「もう少し話せると良いなぁ」と思い始め、それには英語を使う場が必要・・・そうだ、マジックの仕事場でたまに英語圏からのお客さんが来るじゃないか、と。ですから英語での演技の始まりはとても邪な気持ちでして、マジックの場を英語の練習の場としてしまおうと考えました。
ところで、マジックを英語で演じるというのは英「会話」の練習の手前段階としてかなり有効だと感じます。普通はそういう場がなく知識を入れたらあとは会話の実践の場に出るしかないのでしょうが、マジックの演技は事前に言うことを準備出来ますし、返ってくる反応もある程度予測出来ます。そして自分の発している言葉が通じてるかどうかもチェック出来ます。また、相手が話を聞くスタンスでいてくれることもメリットです。自分への興味と相手が話を聞いてくれようとする意志は相関があると思います。(例えマジックの力を借りようとも)自分が相手にとって興味深い存在であれば多少言葉が拙くても話を聞こうとしてくれます。これ、自分の発信する内容がいつまで経っても「日本に行ったことありますか?」「寿司は好きですか?」で、しかも発する英語が崩れていては、それは相手も疲れるしその場から離れたくもなります。

そうは言っても、最初は話す事に意識を持って行かれて日本語の時より手に意識は行ってませんでした。リソースメータは振り切ってましたね。発音も例えばplaying cardsがplaying carsになってたり(どう違うの?って興味ある方はこちらの動画で)、six of heartsがsix of hurtsになってたりとか、さらには完全なカタカナ発音になってたりとか、まぁ、色々と超えるべきハードルはあったと思います。(発音だけは自力では手に負えなくて人の所に押しかけたのが一年ちょっと前。このあたりの話はすでに一度書いています。ん? どこに書いたっけ?)

但し発音は、今改めて思うのは抑えるところだけ抑えておけばあまりシビアに追求しなくても伝わりますね。勿論、これもバランスの問題で発音の精度が下がるなら、その分、発する文は文法ルールから大きく破綻してないとか、リズムやアクセントがそこそこ適切である必要はあり、発音の精度が高ければ単語だけでも通じやすくなります。でも発音をある程度やっておくと、話すのが楽になるって面はあります。そしてその分、他に意識を向けることが出来るのはメリットです。

そして最終的にはどうしたら英語を話せるようになるかというのは実は私にとってまだまだ謎です。五年前はまだまだまずは頭の中で英作文をし、その脳内メモ帳に書いた英文を声を出して読むという感じでした。ようやく、日本語からの英作文をせずに話し始められるようになったかなって程度で、まだまだ言葉につまることもしばしば。ちゃんと話せている人がどうやってそこに至ったのかは興味ある話題でもあります。自分はこうやって克服したよって方法がある方は是非お聞かせ下さい。

・・・と終わりにしようと思ったところで1つ思い出しました。マジック的な視点の話を1つ。演技が始まってしまえば言葉なんてどうにかなってしまうと思いますが、演技を始める前、例えばテーブルホップなどでテーブルに入るときの「よろしかったらマジックご覧になりますか?」のような一言。これは案外盲点です。案外気が回らない。で、その場になってまごつきがち。でもお客様の空間に割って入るわけですし、ここであたふたするとマジックへの興味も半減してしまいますからここで発する言葉は出たとこ勝負でなくて先に考えておくと良いと思います。

9/07/2015

マジックを英語で演技するに際して考えるあれこれ 1

先日、マジックバー・サプライズにいらっしゃったお客様のグループがアメリカの方を含むグループで「演技を出来たら英語で」とのことでした。そのお客様はマジックへの理解もある方でして同時に「マジックのいつものリズムが崩れるようなら日本語で構わないです」とも言っていただいたのですが、色々と気付いたり考察出来る経験でした。
そもそも私は日本国内において海外からのお客様にマジックを見せる際には特別な事情がない限りは日本語で普段通りに演じて構わないと思っています。ブログにも以前書いた記憶があります。
しかし英語で演じることを否定しているわけでもなく自分の付加価値としてとか、キャラクター性の中で英語で演じるという選択肢を持っておくのはそれはそれでありかと。もし英語で演じるのならそのスタイルはキャラクターに合っている必要はあると思います。自分の世界を作るために衣装を選び、(通常時の)日本語のセリフを造り、アクセサリーを身につけ・・・とやっているわけですから英語での演技もやるならその世界を補強するものでなくてはならないわけです。決して流ちょうに話すべきと言っているのでなく、適切なときに適切な単語をぽんと一言発するだけにしても、その人らしいやり方があると思います。

普段接している中から二人例を挙げるならまず進夢氏。本人も言っていますが英語は決して得意でなくボキャブラリーも文法知識も忘却の彼方気味で当初は適切な一言を出すにも苦労したり、ひねり出した英語表現が伝わらず、どうしてもマジックの流れを壊してしまうことが起こってました。が、一年くらい経ったあたりから適切な単語がぽんと出るようになり、また、なまじ英単語のスペルの知識がないだけに信用するのは自分の耳しかなく、音がローマ字から連想されるカタカナに引っ張られることが少ないのが功を奏して聞き返される事態もあまり起こりません。
少し前に進夢氏がマジック道具を購入されたお客様に使い方の説明をしていたのですが、その道具、手渡しの際にロックがかかる機構でしてそのあたりの説明どうするのかなと思って見ていたら「ディス イズ シークレット ボタン」。いや、凄いと思いました。実際の機構はボタンではないのですが言いたいことはちゃんと通じてました。

もう一人はオーナーの龍生氏。こちらもご本人は英語が苦手と言ってるのですが、やはり現場で培った力というか、サプライズのオープン当初よりも現在の外国人対応力はかなり高いなぁと思って見ております。勿論決して現場経験で「自然に楽して」身についたわけでなく努力もされたのでしょうし、マジックに関する英語の文献も読んでいるとのことなので、そこからマジックに使う単語や表現を吸収したというのもあるでしょう。
ですので想像するに、現場経験を経ることで英語文献などに触れたときに使えそうな単語や表現を選ぶことが出来、それをまた現場で使う事でブラッシュアップされていく、という良いスパイラルが出来ているのではないかなと。何が凄いって日本語での演技時のキャラクターとテンションが外国人の前での演技でも全く損なわれませんから。英文のセリフを終始話し続けなくても外国人相手の演技を成立させられるという好例であると思います。

さて、自分の場合はどうかというと「秋元は英語が以前から話せる」と大きな誤解を受けていますが、海外旅行で不安がない程度の力はあったものの(<何も大きなトラブルがなかったときの話)会話力とか、マジックで流れを壊さないだけの英語表現スキルがあったかというと五年前は全くありませんでした。意識して改善しようと思ったのが三年前です。
先日久しぶりに有名な文法書のForestを読んでみたのですが(実は有名であるのは後から知った)、そういう日本語を使って英語を理解、みたいな経験をすると、今でもしばらくは英語を英語として(ホント、元からそんな高くはないですけども)は理解出来ない頭の使い方に戻ってしまい復帰させるのに数週間かかりました。その意味ではまだまだ定着していませんね。通訳とか翻訳とか今やったら(いや、出来るかどうかはさておいて)この三年の積み上げは一気にリセットされてしまうんじゃないでしょうか。所詮、未だにそれくらいということです。

※上にお二人の例を書きましたが、どうしても人のスキルの感想を書くと上からの物言いのようになってしまいがちで、それは本意ではないのですが、そのように見えたとしたら私の文章力の問題です。

長くなったので、その2に続きます。